今年も、千葉県の鴨川市の海岸にゴマフアザラシがやって来た。
このアザラシは、去年もこの場所に現れて、換毛期が終わるまで滞在した。
同じ場所に現れたのだから、ココが安全だと判断しているのだろう。
だが、いくら安全だといっても、野生動物なので周囲の警戒を怠ってはいけないのだ。
しかし、この日アザラシは砂浜から防波ブロックを上りはじめ、ズラリと並んで見物していた人間に分け入るようにして、天辺まで上り詰めてしまった。
このアザラシは若い個体なので好奇心旺盛なのであろうが、これはイイ判断ではない。
上の道路は車道ではないけれど、バイクや自転車、たまに許可を得た自動車も通るのである。
砂浜に居るアザラシにも、それらは見えていたと思う。
事実、バイクや自転車が通ると首を伸ばして警戒し、不穏な動きをする人間にも反応して海へ逃げ込むこともあったからだ。
しかし、連日見物人が押し寄せてくるので、徐々に慣れてしまったのかもしれないが
野生動物が人間を警戒しなくなるのは、その個体にとっては危機的なことなのである。
人間の中にはこれを野生動物と人間の融和みたいに考え、自らも動物に近づこうとしたり、
慣らしてしまおうとしたりする者も現れる。
この状況で、このアザラシがどのように学習したのかは不明だが
人間は安全だと思いこんでしまったのなら、この先、生存していく上でリスクを背負ってしまったのかもしれない。
それは過去に人間を恐れない動物達が辿った運命を考えればわかるはずだ。
不用意に船舶や車両に近づいて事故に遭ってしまったり
つい最近も、人に慣れて一緒に泳ぐようになったイルカが、何者かに背中を銛で刺されて死んでしまった事件もあった。
また最近では、熊や猪、猿などの中に、人間を恐れない個体が現れ
人里に頻繁に下りてきたり、町中を走り回ったりする現象も起こっている。
人間と野生動物の生活域と棲息域が密接になって、重なり合っている場所では軋轢が生じ、事件、事故も起きているのだ。
なぜ、人間を怖がらなくなったのかは、まだはっきりしていないが
人間も野生動物も、お互いの距離感と緊張感が麻痺しつつあるのは確かなようだ。
人間社会と自然界がうまく調和して行くには、お互いに適切な距離感と緊張感が必要なのだ。
それがあれば、同じ地域に暮らしていても棲み分けが成り立ち、人と野生動物は共存していけるのかもしれない。
勿論、棲息に足りる自然環境が必要なのは言うまでもない。
まあ、このアザラシが、陸上で交通事故に遭ったり、事件に巻き込まれず
今年も無事に換毛期を終えて、この場所を離れたのは幸いだったと思う。

オイオイ・・・