干潟のアシ原の奥に、川鵜がジッと佇んでいた。
近づいてみると、少し奥の方へ移動したが、すぐに立ち止まり、辺りを警戒しているようだ。
少し距離を置いて観察してみると、どうやら年老いた川鵜のようだ。
くちばしの欠損などからそれが伺われる。
すでに飛び上がる体力もないようだ。
もしかしたら、数日前に来襲した台風の時に、致命的なダメージを被ったのかもしれない。
それにしても、それ以上逃げもせず、在るところで立ち止まったままいるのは何故なのかと辺りを見てみると、川鵜の奥の草むらに、野良猫が潜んで居るではないか。
川鵜は、野良猫と私に挟まれて、身動きできずに、双方をジッと睨んでいたのだ。
野良猫も、川鵜ぐらい大きな野鳥になると、おいそれとは襲いかかれないようだ。
川鵜の方も、飛べないとはいえ、気力で野良猫を牽制して、攻撃のスキを与えていない。
やがて、野良猫は私の出現もあり、諦めてその場を去っていった。
それを確認したかのように、川鵜は少しずつ奥へと歩き始めた。
私も距離を置きながらついて行くと、ゴミの散乱する場所で立ち止まり、辺りを窺いながら、護岸の上の草むらの中で、座り込んでしまった。
野良猫との睨み合いで、気力を使い果たしてしまったのだろうか
もう飛べないであろう空を見上げていた。
私は近づいて、その傍らに腰をおろしてみたが、逃げようともせず、まるで往生際を悟ったかのようにジッとしていた。
一人と一羽が、ゴミだらけのアシ原の奥に座り込んで、同じ時間を共有したのだった。
しかし、しばらくすると川鵜は、何かを思い立ったかのように立ち上がり、
また、アシ原の奥に歩き始めた。
私はもう、追うことはせずに、川鵜がゴミためを越えて、アシ原の奥に消えていくのを見届けた。
やはりゴミの中で果てるのは本意ではなかったようだ。
川鵜も、最後の場所は自分自身で、相応しい場所を選びたいのだろう。
都会の河川敷でも、人知れずこの様な命のドラマが在ることを、もっと知るべきかもしれない。




